山「ほら」
私「え」
山「使えば?」
私「これは」
山「タオル」
私「このタオル、コンサートグッズだよね」
山「オレの顔写真入り」
私「くれるの?」
山「ファンサービスじゃないから」
私「どうしてタオルを?」
山「かばんに入ってた」
私「自分のタオルなんだ」
山「ハンカチは持ち歩かないからさ」
私「トイレから出たらどうするの?」
山「手なんか洗わねーよ」
私「えええぇっ!」
山「そんなに驚くほどのことなのか?」
私「考えたこともなかったから」
山「幻滅した?」
私「本当に洗わないの?」
山「自然乾燥か、服で拭く」
私「よかった。。。やっぱり洗ってたんだね」
山「ホッとした?」
私「うん」
山「潔癖だもんな」
私「このタオル、どうすればいいの?」
山「泣いてるし」
私「ハンカチの代わりに貸してくれたの?」
山「あと、寒いかなって」
私「あ……」
山「肩から羽織れば?」
私「う、うん(///_///)」
山「オレも落ち着かないし」
私「こんな格好で」
山「なんか赤くなってる」
私「どこ?」
山「胸のとこ」
私「胸に手形が」
山「指の跡、ついちゃったな」
私「
マークだね」
山「吸いついたわけでもないのに」
私「キスマークなら、こんな形にならないよね」
山「ひっぱたかれた跡みてー」
私「顔ひっぱたかれて、頬に手形が残ったり」
山「ドラマでやったことある」
私「知ってるよ。そのドラマ観てたから」
山「あれはメイクで手形をつけてんだよ」
私「やけにクッキリついてるな、と思ってた」
山「本当につくもんなんだな」
私「手形が残るほど強くつかまれたの、初めて」
山「離したくなくて」
私「つかみっぱなしに」
山「痛かった?」
私「うん」
山「そうだよな」
私「野蛮だったから」
山「さすってやろうか」
私「……いいよ」
山「いいのか」
私「また取り乱されても」
山「逆上っていうか」
私「我を失ったんだね」
山「うん」
私「今は我に返ったの?」
山「泣いてんの見たら」
私「正気に戻ったんだ」
山「これじゃDVだな」
私「手形ついたしね」
山「セクハラどころじゃないわ」
私「亀ちゃんのこと言えないじゃん」
山「無理やりだし」
私「嘘ついて騙したしね」
山「騙すつもりじゃなかった」
私「計画的犯行の意思はなかったんだ」
山「見るだけのつもりだった」
私「でも見たらカーッとなって」
山「押し倒してた」
私「衝動的な犯行?」
山「気がついたらガバッといっちゃってて」
私「つまり、自分の意思ではないと」
山「そうしたかったからしたんだよ」
私「あっさり自白しちゃったね」
山「計画的犯行とは違う」
私「もういいよ」
山「嘘じゃないんだ」
私「ヤマピーが嘘つきなのは知ってるから」
山「嘘つき?」
私「撮影で冷たい冬の川に入って『逆に楽しかった』とか」
私「高い所は苦手なのに『またヘリに乗りたい』とか」
私「しらっとした顔で大嘘を」
山「それは嘘じゃなくて」
私「演技?」
山「演技でもない」
私「強がりだよね」
山「強がりでも」
私「楽しかったと伝えたい」
山「ファンの前では堂々としてないとさ」
私「イメージのために大嘘を」
山「男気を感じてほしい」
私「やせ我慢て人の心を打つよね」
山「男気で耐えてるんだ」
私「本当は寒くても怖くても、弱音なんか吐けないんだ」
山「我慢強い人間だから」
私「胸に手形が」
山「きょうは、我慢できなくて」
私「それじゃあ強がりも言えないね」
山「後から何を言っても言い訳に聞こえる」
私「OPPAIには勝てなかったなんて言えないよね」
山「……ここから先は、我慢する」
山「また来るよ」
山「この部屋には泊まりたくないし」
私「亀の壁紙に亀のカーテンだから?」
山「こんなところじゃできない」
私「亀ちゃんなら、どんな状況だろうと冷静に興奮できるって言うよ」
山「……やろうと思えばできないこともない」
私「強がり?」
山「ちげーよっ」
私「そんなにムキにならなくても
」
山「ちゃんとしたいから」
私「ちゃんと?」
山「けじめっていうか」
私「けじめをつけてから?」
山「亀からもテゴシからも取り戻して、それから」
私「胸を張って、堂々としていたいんだ」
山「うん。それもあるし」
私「ほかにも何かあるの?」
山「オレより、おまえのほうがダメだろう」
私「私?」
山「テゴシの妻で、亀の部下のままじゃ」
私「……」
山「潔癖だもんな」
私「私はもう……」
山「きちんとする」
山「きれいに清算して」
山「なんの負い目も感じずにすむようにする」
山「人のものを取るわけじゃない」
山「自分のものを取り返すんだ」
山「おまえが亀の家にいて、あいつに仕えるのはおかしい」
山「オレのものなんだから」
山「返してもらう」
山「奪い返す」
山「約束手形だな、それ」
山「約束の印」
山「必ず連れ戻すよ」
山「約束……」
私「ヤマピーってさ」
山「何?」
私「何を言ってもカッコイイよね」
山「へ?」
私「襲っておきながら、その台詞」
山「台本なんかいらない」
私「胸に手形つけても約束の印になっちゃうんだ」
山「約束の手形だ」
私「顔の前で小指立てて、『約束……(-_-)i』」
山「即興でやれんだよ」
私「そんなことばかりやってきたから、カラダに染みついてるんだね(笑)」
山「目線はつけないぜ」
私「亀ちゃんだったらカメラ目線だよ」
山「わざとやってるわけじゃない」
私「ヤマピーがやると、驚くほど自然だよ」
山「あ、そうだ」
私「???」
山「これ、ケータイで撮った」
私「写真?」
山「道歩いてたら、キレイなのあったから」